酒井隆司 生活の道具

良質の労働が良質の社会を形成する。信州松本で家具と生活用具を作っています。

憲法 第九条


先に紹介した昭和22年に文部省が発行した中学一年用の社会科の教科書の復興本。
後書きには本書の一部には現行の制度とは異なる表記や現在では不適当と思える
表現があるが終戦直後に執筆されたもので当時の文部省のあり方を知る上で
資料的な意味があるとの判断から、そのままとした。とあります。


では第二章 戦争の放棄。これは第九条の一条のみです。
その復興本はちょっと長いんですが全文を引用します。


戦争の放棄


みなさんの中には、こんどの戦争におとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。
ごぶじでおかえりになったでしょうか。それともとうとうおかえりにならなかったでしょうか。
また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。
いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと
思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。
何もありません。ただ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。
戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。
だから、こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。
このまえの世界戦争のあとでも、もう戦争は二度とやるまいと、多くの国々ではいろいろ
考えましたが、またこんな大戦争をおこしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。


そこでこんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。
そのなかの一つは兵隊も軍艦も飛行機もおよそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。
これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これは戦力の放棄といいます。
「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく
思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。
世の中に正しいことぐらい強いものはありません。


もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして
じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。
おだやかにそうだんして、きまりをつけようというものです。
なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの国をほろぼすような
はめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手をおどすようなことは
いっさいしないことにきめたのです。これを戦争の放棄というのです。
そうしてよその国となかよくして、世界中の国が、よい友だちなってくれるようにすれば
日本の国は、さかえてゆけるのです。


みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように
また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。


では実際の憲法ではこうなっています。


第二章 戦争の放棄


第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と
武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争
解決する手段としては、永久にこれを放棄する。


2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は
これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。



とても短いです。教科書の方は切々と平和を説いている印象です。
そして前文の重要性については先の記事に書きました。
その前文にある一節。


平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を
保持しようと決意した。


とあります。僕はそこを私達は人間の愛を信じて私達の安全と生存を保持しようと決意しました。
と、変えて書いてみましたが多くの人はそんなのは夢物語だというでしょう。
僕もそう思えなくもないです。でも憲法は崇高な理念に基づいて書かれるものだと思います。


僕は憲法を研究も勉強もしていませんが今回ここを初めて読んだ時にこの一節は第九条に
かかっていると思いました。諸国民の公正と信義に信頼して、私達の安全と生存を保持しようと
決意した。つまり私達は軍隊を持たないけれど諸国民の公正と信義を信じてこれを放棄し
私達の安全と生存を保持しようと決意した。曲解でしょうか?
多分こんな条文、考え方はは世界の憲法のことは全く知りませんが日本の憲法だけかもしれません。
ジョークまがいでしょうが第九条を世界遺産にするなんて話も聞いたことがあります。
しかし現実は自衛隊という軍隊と日米安全保障条約で保持しています。


ちょっとブレイクです。