酒井隆司 生活の道具

良質の労働が良質の社会を形成する。信州松本で家具と生活用具を作っています。

終末のフール/伊坂幸太郎


久し振りに伊坂幸太郎、借りて来ました。
ちょっと数えてみたらこれが10冊目。
今回も面白かったです。
日本語的に韻を踏んだ・・・のフール、シール、ビール、ガール・・・
8つの短編集。とは云ってもお決まりの舞台は仙台。登場人物もリンクしてます。
これは伊坂幸太郎の小説全体に云える事ですね。

さてお話はありふれた日常。
ホームドラマ、青春もの、日常風ではありませんが犯罪ものあり・・・
ただこの小説がユニークなのは地球が後3年しか、もたないことです!
隕石だか惑星だかが落ちて来ると云う事で。
もちろん世の中は大混乱。暴動、略奪、自殺、殺人・・・
ただ物語の現在は少し落ち着いてきてる状態。
単なる日常の物語がそんな設定で読者は2重の感じ方ができるのかもしれません。

例えば太陽のシールでは子供ができないと思っていた夫婦に妊娠が告げられます。
超優柔不断の夫の出す答えは?
この小説、許すと云う言葉がキーワードになっているんでしょうか、よくでてきます。
この話にも夫婦のどちらかが言います。産んでも子供は許してくれるだろうか?
妊娠して産まなくても許してくれるだろうか?・・・


個人の余命をテーマにした物語は多くあります。
助からない病気によって宣告された余命。
それ以外の多くの人は、ただ知らされていないというだけです。

例えば先の夫婦。地球が滅亡しない世界で子供を産んで
3年後に3人とも交通事故で亡くなってしまうとか。
そしてこの小説のケース・・・


とても工夫を凝らした作品だと思いました。
さて小説の冒頭には誰かの言葉の引用があってこんなことが書かれています。


今日という日は残された日々の最初の一日。
Today is the first day of the rest of your life/by Charles Dederich