酒井隆司 生活の道具

良質の労働が良質の社会を形成する。信州松本で家具と生活用具を作っています。

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか 内山節


内山さんの本、久し振りに読みました。
25才の頃会社の同僚、上司5、6人で初めて渓流釣りに行き
後日、本屋で目に止まった『山里の釣りから』これがこの人の僕にとっての一冊目。
釣りの本と思いきや、もちろん釣りの事も書かれてますが、
この人の専門は哲学。でも哲学書に出て来るような用語はでてきません。


僕が惹かれたのは労働というキーワードから人間を見ていくこと。
気付かされたのは仕事=賃金、仕事=会社。だけではないということです。
何時の頃からか仕事とプライベート、仕事とレジャー、仕事と生活・・・を
分けて考えるようになりましたが仕事というのは賃労働以外の仕事、遊びの要素、
教育的要素、共同体、社会性、個人の成長とかもちろん苦しさ・・・
そして私が私であるということ。
色んなものが一体となっていたんではなかったのでしょうか。
自営であろうが雇われていようがそれを仕事の中で
実感できれば幸せだと思います。
まあそんな呑気な事をいってもいられない状況ですが・・・

ちなみに最近書き加えたプロフィールの言葉。実は20年程前、
最初の松本クラフトフェアーに申し込む時にレポート用紙2枚に
なんだかいろいろ書いた一節です。
内山さんが述べていた言葉ではありませんが、この人の影響でしょうね。



さて肝心のこのタイトルの本。キツネに限った事ではなく
タヌキだったり植物、石・・・そういえば最近、見た蟲師というDVD
これは虫のお話。虫の知らせ、なんとかの虫、虫ずが走る・・・
アニミズムという言葉もありますが、科学の影響を受けなかった時代の
生命観、死生観、宇宙観みたいなものを単純に非科学的で劣っている
とはいえないでしょう。

出発点の問いが事実かどうかにかかわらず、
その考察過程ではいくつもの事実がみつけだされると著者は述べています。
そしてあとがきを引用すれば
・・・近代化とは何だったのかだろうか・・・良かったのか悪かったのか・・・
精神文化が根本から変わったといってしまえば簡単だ。
だがその内容は解き明かされていない。とすると現代の私たちは、
歴史の変化の中味がつかめないままに漂っているということにならないか。
不明なのは精神文化だけではなく、私たちの存在そのものでもある。・・・


『山里の釣りから』を読んだ頃は他に2、3冊の著書の数でしたが今はかなりあります。一読をおすすめします。

http://www.uthp.net/